こんにちは。番町麹町こどもクリニックです。
衆議院が解散し、総選挙となりました。「衆議院を解散します」と議長がいうとなぜかみんな万歳三唱・・私は幼いころ「職がなくなるかもしれないのになぜ万歳?なぜうれしいのかな?」と父に聞いたことがあります。父が「当選する自信があるんだよ」といったので、「そうかこの万歳しているひとたちは自信があって、なかには嫌だな、自信ないなって人もいて、その人は万歳していないのか」と万歳をしていない人を探した記憶があります。子供の目にも不自然にみえる万歳三唱ですが、新しい良き時代の発展を願ってと思えば合点がいきますでしょうか。日本にとって2030年までのあと数年が、少子化傾向を反転できるラストチャンスとなるそうです。(2030年代に入ると若年人口は現在の倍速で急減し、少子化はもはや歯止めが効かない状況になると予想されています)なんとか少子化対策に力を注いでいただけることを願っています。SNSで飛び交う心無い言葉に胸が痛みますが、なんといっても子供は宝です。これからの社会を支えていくのは子供たちです。その子供たちに支えられて私たち世代は安心して老後を迎えられるのですから、子供がいるいないにかかわらずみんなで宝を守っていけたらいいなと思います。そしてなにより宝がなくてはそもそも守れないので、子育て支援同様、妊活支援にも注力してくれることを願います。さて今回はそんな少子化の時代に光をもたらす妊娠中、妊活中の方々へ敬意を表して、少しでも力になれれば幸いです。
【妊娠・妊活中共通】
①葉酸をとりましょう
ご存知の通り、細胞増殖に必要なDNA合成に関与している葉酸は、妊娠初期に不足すると、胎児の神経管形成に不具合が生じやすくなります。そのため「日本人の食事摂取基準」には『妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性及び妊娠初期の妊婦は、胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減のために、通常の食品以外の食品に含まれる葉酸(狭義の葉酸)を400µg/日摂取することが望まれる』と記載されています。これは通常の食品から得られる葉酸よりサプリメントから得られる葉酸の方が体内吸収率がよいためです。いまは簡単に摂取できるサプリメントがたくさんありますので活用してみてください。(当院でも無添加の葉酸+ビタミンDサプリ販売しております)
②バランスよく食べましょう
妊娠中気を付ける必要がある食材は確かにあります(詳しくは割愛します)が、児のアレルギー予防の目的で摂取を制限する食材はありません。医学的根拠はありません。また妊活中におすすめ食材やNG食材などがSNSなどで飛び交っていますが、なによりバランスよく食べることの方が重要です(例えばタンパク質を多く摂取しても食物繊維が不足し便秘になったら意味がありませんし、ビタミンDを含有するきのこや魚が苦手なのに頑張ってたべていてもストレスがたまります)妊活中にカフェインもアルコールも摂って問題ありません。妊娠したあとのため自身の体調、こころの健康を整えていくことが大切です。繰り返しますが「これを食べれば妊娠する」といった妊娠率をあげる食品や食事は存在しません。(参照;東京都福祉局 東京都妊活課)
【妊活中】
①MRワクチンを打ちましょう
妊娠してしまうとMRワクチンは接種できなくなります。第1子妊娠中の検査で抗体価が低いといわれた方は出産後すぐにMRワクチンの接種を勧めています。(※授乳中でも接種して問題ありません)抗体価が分からない方は少なくても風疹の抗体検査をしてから妊活することを推奨します。または検査をせずにMRワクチンを接種しても構いません。(不妊治療のクリニックでも風疹抗体価測定を必須としているところもあります)とはいっても、それぞれご事情もあるでしょうからわからないときは相談してください。MRワクチンとはご承知の通り麻疹+風疹ワクチンです。風疹と妊婦の影響については今回は省略しますが、麻疹と妊婦の影響についてはあまり知られていないので確認しておきましょう。妊娠中に麻疹に罹患すると、(1)重症化しやすい(2)早流産のリスクが高まる(3)風疹のような児の先天的奇形のリスクは少ない などの影響があります。さらにお母さんに麻疹の抗体があれば、おなかにいるとき赤ちゃんにも移行し、6ヶ月程度は維持されます。逆に抗体のないお母さんからうまれた新生児が1~2歳までに麻疹に罹患すると重症化しやすいというという報告があります。今の子供たちはMRワクチンを2回接種していますが、保護者世代の方は2回接種が済んでいない可能があります。現在のMRワクチンの導入は2006年(平成18年)です。それ以前は原則、麻疹単体ワクチン、風疹単体ワクチンを接種していました。よって、各ワクチンをそれぞれ2回接種しているか確認してください。※千代田区では大人の方の風疹抗体検査および予防接種の助成を行っていますが、現在MRワクチンの流通が不安定のため、在庫状況を医療機関に事前に確認してください。
【妊娠中】
妊娠中にワクチンを接種する目的は、お母さん自身の感染と重症化予防ももちろんありますが、主はお母さんの抗体が胎盤を通して赤ちゃんに移行し、出生してからの赤ちゃんを病原体から守ることです。赤ちゃんは半年ぐらい風邪ひかないとよく言いますよね。それはもちろんお腹の中にいるとき胎盤を通してお母さんから免疫をもらっているからです。お母さんが多くの病原体に対する抗体を持っているからこそ赤ちゃんは守られるのです。妊娠中のワクチン接種は赤ちゃんに影響がないか不安に思う方も多いと思いますが、不活化ワクチンは理論的にお母さんにも赤ちゃんにも問題はありません。ただそうは言っても心配になるお気持ちはよくわかります。以下接種推奨時期や必要性を簡単にまとめました。繰り返しますが妊娠中のワクチン接種は出生早期の赤ちゃんを守るため、ベビーカーやベビー服同様、とても大切な出産前準備です。
①RSウイルスワクチン
2026年4月より定期接種化されます。正期産でうまれた赤ちゃんに接種できるRSウイルスワクチンはありません。妊娠24週0日から36週6日までの間に接種しましょう。
②百日咳含有ワクチン
日本では百日咳含有ワクチンである5種混合ワクチンの接種は生後2ヶ月からです。つまり生まれたての赤ちゃんを守ることが出来るのは、お母さんからの抗体しかありません。新生児の重症化予防としてTdapが欧米諸国では推奨されていますが、日本では認可・販売されていません。そのため日本では同じく百日咳含有ワクチンDTap(トリビック;いわゆる三種混合ワクチン)を妊娠後期(妊娠28週から36週)に接種することが考慮されています。ただしDTapは母から子への抗体が移行することは証明されていますが、それが重症化予防につながるかはまだ証明されていません。(※Tdapは重症例の減少につながっていることが分かっています)ただ昨今の百日咳の感染者数が増えていることを考えると接種しておくことを推奨します。同時に就学前後のご兄弟や中学入学前のご兄弟がいるご家庭は、お兄ちゃんお姉ちゃんのDTap接種で赤ちゃんを守ることが出来ます。(※日本小児科学会では就学前・中学入学前のこどもたちに三種混合ワクチンの接種を推奨しています。詳しくはこちらのブログで→年度末 ワクチンの接種漏れないですか
③インフルエンザHAワクチン
妊娠全期間を通して接種しても問題ありませんが、妊娠初期はワクチンの有無にかかわらず自然流産しやすいので、ご心配な方は妊娠14週以降に接種することも可能ですが、インフルエンザの流行期は毎年異なりますのでご相談下さい。また経鼻弱毒生ワクチンは接種できません。日本のインフルエンザHAワクチンには通常チメロサール(エチル水銀)と言われる防腐剤が含まれています。この量はごくわずかで胎児に影響はないと言われています。懸念されていた自閉症との関係も否定されています。チメロサール含有ワクチンを接種しても問題はありませんが、当院ではチメロサールの含有していないワクチンもご準備がありますので、ご心配な方は接種可能です。
④SARS-CoV-2ワクチン
メッセンジャーRNAワクチンであり、他の不活化ワクチンとは異なりますが、妊娠全期間を通して接種可能です。SARS-CoV-2wワクチンに関しては様々な意見がありますが、お母さん自身の重症化予防と移行抗体による赤ちゃんを守る効果は確認されています。特に気管支喘息、糖尿病、高血圧など基礎疾患を有している妊婦さんには接種が推奨されています。
結論
妊活中の期間と妊娠中の期間は同じではありません。赤ちゃんのために妊活中にしか出来ないこともあり、妊娠中ではないと効果がないこともあります。ワクチンはもちろん100%安全ではありませんが、それより有益な効果の方が上回るため接種を推奨します。情報量が多い分、困ってしまうことも多いかと思いますのでご不安なときはなんでも聞いて下さい。




