こんにちは。番町麹町こどもクリニックです。
待ちに待った夏休み。でも令和の夏は暑すぎる気が💦もちろん熱中症にも注意が必要ですが、だいたいじめじめした六月ぐらいからあせもや水いぼの相談も増えてきます。あせもも水いぼも実はアトピー性皮膚炎の子に多くみられます。わたしも小さい頃アトピー性皮膚炎で、肘や膝裏が夏になると赤くなり、汗がしみて痛かったこと、お友達は白くてつるつるなのに自分は赤いぼつぼつがあって嫌だったことは今でも覚えています。全身アトピー性皮膚炎の友人はスピーチコンテストで「写真を撮られるのが嫌いだった」と話していたのも印象的でした。当時のアトピー性皮膚炎は「仕方ない」でした。アトピー性皮膚炎だから刺激の少ない石けんを、アトピー性皮膚炎だから宿泊行事に布団を持参、そういったことでしか対応できなかったのです。でもいまはちがいます。アトピー性皮膚炎に効果の証明されている治療法がいくつかあり、自分で選択することができます。以前もブログ「アトピー性皮膚に注射のすゝめ ~「かいちゃダメ」より「かゆくない」へ~」でも紹介しましたが、アトピー性皮膚炎の治療は「仕方ない」から「選べる」時代に進歩しています。お子様にあう治療法を選ぶきっかけになればうれしいです。
アトピー性皮膚炎の治療の基本は、現在の皮膚の炎症とかゆみを速やかに抑えることにあります。そのための抗炎症外用薬として①ステロイド外用薬②タクロリムス軟膏③デルゴシチニブ軟膏④ジファミラスト軟膏は十分な効果と安全性が認められています。 なかでもステロイド外用薬はアトピー性皮膚炎の治療として60年以上前から使用され、いまでも小児のアトピー性皮膚炎に対して第一選択薬として多く使用されています。ステロイド外用薬には様々な考えがあるかと思いますが、適切なステロイド外用薬の使用により、現在の皮膚の炎症とかゆみを速やかに抑えることが出来るのは確かです。繰り返しますが、アトピー性皮膚炎の現在の皮膚の炎症とかゆみはステロイド外用薬の塗布により確実に改善します。しかしこの状態を維持することがアトピー性皮膚炎治療の第二の関門であり、私は最も難しく、最も根気の要る関門であると考えています。でもこの関門を突破しなければアトピー性皮膚炎の治療のゴールとはいえません。炎症を速やかに押さえ込む時期を寛解導入期と呼ぶのに対し、きれいな状態を維持することを寛解維持期と言います。寛解維持期をどのような方法で守っていくかが実はアトピー性皮膚炎治療の肝なのです。
ではどのように寛解維持期の状態を死守するのがよいのか?という疑問が出てくると思います。しかしその答えは一つではないのです。さらには炎症を抑え込み寛解導入期へもっていく方法も上記の①ステロイド外用薬②タクロリムス軟膏③デルゴシチニブ軟膏④ジファミラスト軟膏だけに限りません。その薬に併用して経口抗炎症薬や注射療法、さらには紫外線療法も効果が認められています。でも考え方やライフスタイルはそれぞれ。
Aさん:外用薬より内服や注射薬は副作用がこわいし、なんか重症感があって気になる。そこまで重症じゃない。
Bさん:注射がきらいなこどもはいない。できればほかの方法はないのかな。
という声をよく聞きます。外用薬やほかの方法で効果が得られているならそれでOKです👍でも効果が得られていない場合は?やっぱりかゆくて夜中にかいていてもざらざらした肌もある程度は仕方がないでしょうか?ただお子様自身はどうでしょう?本当はかゆくて勉強に集中できない、安眠できない、ほんとはつるつるの肌で好きな洋服を着たいと思っているかもしれません。それなら注射薬や内服を視野にいれてみるのも一つです。デュピクセントはアトピー性皮膚炎に対し、生後6か月から適応があります。もちろん注射なので痛みを伴いますが、エムラパッチ(※ペンレスより強い麻酔効果、針を刺しても痛くない!)という局所麻酔薬を使用したり、冷やすことで痛みを緩和できるかもしれません。さらに1度頑張ってチャレンジした結果、肌がつるつるになることが実感できれば、次回も頑張ることができるかもしれません。
Cさん:ステロイド塗ればよくなるけどやめたら悪くなるを繰り返して疲れちゃって
Dさん:注射も結局すればよくなるけど、やめたら悪くなるんでしょ。
という声も。お気持ちよくわかります。アレルギー性鼻炎の舌下療法も何年続けるのですか?とよく聞かれます。舌下療法は3年ほどとご案内していますが、アトピー性皮膚炎の治療は終わりが見えません。それが治療をやめてしまう大きな要因と考えます。正直アトピー性皮膚炎は多くはステロイド外用薬を塗りたぐればきれいになります。でも文字通り毎日のように『塗りたぐる』ことが必要でかつそれを続ける必要があります。当院に風邪症状でこどもが受診し、お母様がアトピー性皮膚炎で皮膚があれていることも少なくありません。そんなとき声をかけると、「もうずいぶん長いこと治療しているんですが治らなくて・・」とお話されます。その「治らなくて」は「外用薬塗っても治らない」ではなく「塗ってきれいになってもまたぶり返して、結局は塗る頻度が少なくなって、今も治っていない」の意味であることが伝わってきます。これがアトピー性皮膚炎の大きな疾病負荷の一つでもあります。結局は各種外用薬を塗って、保湿剤を塗ってを毎日繰り返さないとまた悪くなる。その繰り返しに疲れてしまい、結局塗るのをやめてしまうのです。ではデュピクセントはどうでしょうか。デュピクセントも同じように30kg以上は2週間に1回の注射を続けなければなりません(30kg未満は4週間に1回)しかしその2週間は肌がきれいな状態を維持でき、注射は1回15秒程度、さらに自己注射なので通院の必要はなく慣れてきたら最長3か月に1回程度の受診で済みます。デュピクセントをやめたあとの症例はあまりまだ明確にはなっていませんが、やはり1年以内に再開するケースもあるようです。それでもデュピクセントのおかげで、やめてからも外用剤塗布の頻度が少なくても維持できた、保湿剤だけで維持できた、ステロイドのランクを下げることができたなどの症例もあるようです。毎日塗るのが苦痛でなければそれでOKです👍ただし小さいお子様は塗るのも範囲が狭いので塗りやすい反面、だんだん嫌がってくるので塗る保護者の方の負担なるのか、思春期を過ぎてきたらこども自身でしっかり塗らないといけないという本人の負担となるのかは、まさに考え方、生活、ライフスタイルによるかと思います。こどもとご家族にあう治療法を話し合っていきましょう。さらにそれも年齢によって変わりますので、成長とともに見直す必要があります(一般的には3歳、6歳、12歳が既存治療を見直すタイミングです)でも大切なのは「選べる」と言うこと。そして治療のゴールも自分で決めるということ。まずはデュピクセントを1年続けてみたら、今とは異なる選択肢やゴールがみえるかもしれません。
最後に当院でのデュピクセント導入についてお話しします。
・デュピクセントは6ヶ月から使用が認められましたが、当院では1歳~を勧めています。
・デュピクセントを投与している間、生ワクチンは接種できません。そのため1歳のMR①、おたふく①、水痘①と②の接種が終了してからの導入を勧めています。
・次に問題となるのは年長時のMR②、おたふく②です。このワクチンを接種するためには接種前12週から接種後4週デユピクセントをやめる必要があります。その間の皮膚のサポートと中止から再開までの予定を調整いたします。
・さらにこどもでは季節性のインフルエンザワクチンも問題となります。経鼻弱毒生ワクチン(フルミスト)は生ワクチンです。デユピクセントを投与中であってもフルミストを選択することが出来るよう、こちらも事前に接種間隔を調整し、副反応(感染症など)が起きていないか評価します。
・デュピクセントの副作用として結膜炎がみられます。これは感染性結膜炎ではなく、ドライアイによるものと考えられています。予防的にムチン(涙液)産生目薬を併用するなどの対処法をご提案します。
・デュピクセント最大の難関は投与時の痛み。院内で投与する場合は前述のエムラパッチは保険の適応となりますが、在宅自己注射の場合は適応外になります〈涙 ただし自費ならOK (500円/回)。
※先日、すでにデュピクセントを導入済みのお父様が大人のMRワクチンを接種に来院されました。MRワクチンは風疹や麻疹の予防ワクチンであるため、お父さん、お母さん世代の方も比較的接種する機会が多いワクチンです。しかし生ワクチンなのでデュピクセント投与中は原則接種できません。デュピクセントを投与している場合は生ワクチン接種前にご相談下さい。
主な生ワクチン MRワクチン 麻疹単独ワクチン 風疹単独ワクチン 水痘ワクチン(帯状疱疹ワクチン;シングリックスは不活化です)、おたふくワクチン(MMRも)、経鼻弱毒インフルエンザワクチン(フルミスト)、BCG
結論
デュピクセントは小さいこどもでも使用できます。デュピクセントは重症アトピー性皮膚炎の方のみの治療法ではありません。ステロイド外用を毎日塗り続けるか、デュピクセントを2週間に1回(30kg未満は4週間に1回)投与するのか生活スタイルによって選択できるようになりました。大切なのは先の長いアトピー性皮膚炎の治療の中で、できるだけ疾病負荷のかからない治療を継続し、なりたい自分になれることです。そのために全力でサポートいたします。




