インフルエンザワクチンを接種しない理由について検証してみた~米国の研究結果を基に~|番町麹町こどもクリニック|四ツ谷・麹町の小児科・内科・アレルギー科

〒102-0084 東京都千代田区二番町8-20 二番町ビル6階
TEL.03-5357-1311
ヘッダー画像

インフルエンザワクチンを接種しない理由について検証してみた~米国の研究結果を基に~

インフルエンザワクチンを接種しない理由について検証してみた~米国の研究結果を基に~|番町麹町こどもクリニック|四ツ谷・麹町の小児科・内科・アレルギー科

こんにちは。番町麹町こどもクリニックです。

「〇〇さんは注射で受けたから2回目あるって」「△△さんは今日打つって」こどもにとってもインフルエンザワクチンは一大事。しかし不思議なことになぜか他のひとのワクチン事情は楽しそうに話します。兄弟で接種にきても自分が終われば急に声が大きくなるのは注射あるあるです。そんななか「◇◇さんは打たないって」という話も耳にしました。「なんで?って聞いた?」と聞くと、「きいたけど、◇◇さんもわからないって言ってた」とのこと。医療に携わる者として寂しい気持ちもしますが、ご家庭それぞれの方針があるでしょうから仕方ありません。でも理由はなんだろう?と想像を巡らせました。「病院にいくのが面倒くさい」「お金がかかるから」「注射が嫌だから」「打っても毎年かかるから」「副反応が怖いから」etc… 理由は一つではないかもしれません。世界的にはどうなんだろう?と気になって調べてみました。

米国の6か月から17歳までのこどもに対しインフルエンザワクチン未接種の理由を親から調査した報告(Vaccine. 2025 Jul 01;61:127415.)では「こどもがインフルエンザに罹患しても重症化する可能性が低いと認識」が一番多かったそうです。この理由はコロナ禍以降増えているそうです。さらに「ワクチンの副作用・安全性への懸念」、「インフルエンザワクチンの有効性が低いと認識」が続き、インフルエンザワクチンへのアクセスを理由に挙げた親はごく少数であったそう。つまりこの結果から推測すると、インフルエンザワクチンを接種したいけどできないわけではなく、あえて接種しないを選択しているひとの割合が未接種者の中では多いのでしょう。もちろん州によって、人口学的特性によって未接種理由は異なるとのことでしたが、日本も同じようにインフルエンザワクチンをあえて接種しないことを選択しているが未接種の理由として多いと感じます。そして特にコロナ禍以降インフルエンザワクチンにかかわらずワクチン未接種の方が増えている印象を受けます。SNSやインターネットで自分で検索できるようになった影響も大きいかもしれません。

その一方でこんな報告もあります。

米国で6か月から17歳のこどもの親が医療提供者からインフルエンザワクチン接種の推奨を受けたこととインフルエンザワクチンの接種率の関係を調査した( 10.1016/j.vaccine.2018.04.077)結果、医療提供者からの勧めを受けた子どもは、勧められなかった子どもに比べてワクチン接種を受ける可能性が2倍高かったそうです。

よく「ワクチン打った方がいいですか。先生はどう考えますか?」と患者さんのご家族から質問を受けます。私の立場で言ってしまうとご家族の判断に影響を与えうるので明言は避けるようにしていますが、医療を提供するものとして事実は伝えています。なので今回も米国の研究結果から推測されるインフルエンザワクチンの接種をしない人が抱いている懸念点についてお答えしたいと思います。

①「こどもがインフルエンザに罹患しても重症化する可能性が低い」という認識について

インフルエンザの重篤な合併症としてインフルエンザ脳症があります。昨シーズン2025年/2026年報告されたインフルエンザ脳症のうち0歳から19歳で90%を占めるそうです。つまりインフルエンザに罹患して重篤な合併症を引き起こすのはほとんどがこどもなのです。さらに昨シーズン2025年/2026年の別の報告では、0歳から14歳までのインフルエンザで入院した患者数は10559人で、70歳以上のインフルエンザで入院した患者数8962人より多いことが分かります。(第一三共Medicalcomunity 小児のインフルエンザの減少と予防対策より)これらの結果からわかることは、インフルエンザはこどもに多く起こる病気であり、こどもが罹患すると重症化する可能性が成人より高いと言えます。

②「インフルエンザワクチンの副反応・安全性への懸念」について

このことに関しては別の媒体やブログでも同じことを繰り返していますが、どんなワクチン・薬も100%安全なものはありませんし、ワクチンの影響と考えられる症状で今でも苦しんでいる方がいることを忘れてはいけません。ただ特にインフルエンザワクチンに関しては、不活化の注射ワクチンも経鼻弱毒生ワクチンも重篤な副反応はほとんど起きません。しかしその一方で、前述のようにインフルエンザに自然感染すると重篤化する可能性も脳症を併発する可能性も大人より子供の方が高いと言えます。この事実を踏まえ、どう判断するかは親である皆さんが決めることになります。先日「知人がフルミスト接種後の副反応で1週間欠席したが、インフルエンザなら出席停止になったのに、ならなかった。これなら実際かかった方がよかったと言っていました。」という話を聞きました。ワクチン接種後、インフルエンザに罹患したときと同程度もしくはそれ以上にとても大変な1週間だったのでしょうと推察されますが、「かかったほうがよかった」という文言からはインフルエンザ感染症はこどもに感染すると重篤化する可能性があると思われていないように感じました。ちなみにインフルエンザワクチンに含有される添加物チメロサールを気にされる方がいますが、自閉症発症との関連は否定されています。妊婦さん含め、通常のチメロサール含有ワクチンを接種して問題ありません。

③「インフルエンザワクチンの有効性が低い」という認識について

多くのみなさんにとってワクチンの有効性というと「ワクチンを接種すればその病気にかからない」ことを指していると思います。そういう意味でいうとインフルエンザワクチンを接種しても100%発症を防ぐことはできません。「だから接種しない」という方も多いかと思います。「接種しても感染するし・・」いう声をよく耳にします。しかしワクチンの目的は感染・発症予防だけではありません。重症化予防・感染症のまん延予防、感染症の排除・根絶も大切な目的です。6か月に満たない赤ちゃんがいるご家庭では「インフルエンザのワクチンを接種できないからあまり帰省しないほうがいいですか?」などと質問を受けるときがあります。そのような時は「お母さんやお父さん、さらには帰省先の方がワクチンを接種することで、赤ちゃんの感染リスクを減らせます」と伝えています。このようにワクチンはあなただけでなく、あなたの大切な人を守ることにもつながります。世界中の方がワクチンを接種すれば、いつかその病原体はを根絶することができます。そう考えればワクチンはとても有効な手段であるといえます。

インフルエンザワクチンを接種しない理由は様々ですが、わたしは以上のような説明をし、インフルエンザワクチンを推奨すると言うでしょう。この推奨により、ワクチン接種をする人が2倍に増えることを願っています。

結論

インフルエンザワクチンによる重篤な副反応は起きる可能性は少ないが、インフルエンザによる重症化・合併症の併発の可能性は大人より子供の方が圧倒的に高い。多くの人がインフルエンザワクチンを接種することでインフルエンザのまん延を防ぐことにつながるので、あなたのまわりの大切な人のためにもワクチンを接種しよう。インフルエンザワクチン接種が増えることを願って、当院ではインフルエンザワクチン接種を推奨しますが、ご家庭での判断を尊重します。

TOP